38歳で結婚した漫画家、水玉ペリさんによる妊娠・出産漫画です。
感想のサブタイトルに「流産」と入れていますが、自身の流産体験を詳細に描いている作品です。
流産体験とその時期の自分の様子を描いた妊娠・漫画は珍しいです。
私自身は流産の体験がありませんが、友達が2度続けて流産となってしまい…(どちらも7週目でした)。
体験してないから辛さは分からないし、なんと声を掛けていいものやら分からず。こういう時は黙して聞くのが1番だと思ったので静かに聞いてました。
この本を読んだことで、当時の友達がどんな気持ちだったのか、少しだけわかったような気がします。
160ページ、918円(税込)。
amazon ★★★★★(5.0) ※レビュー1件
楽天 レビューなし
【内容紹介】
水玉ペリ、38歳新婚マンガ家。
なんとなく始めた子づくりだったけど、こんなに難関が待ち受けていたなんて…!!
山あり谷あり、涙あり笑いありの妊娠出産コミック!!
【感想】
作者の2度の流産体験を中心に描いた妊娠・出産漫画です。
サブタイトルに「不育ロード」とありますが、作者は不育症検査を受け、不育症ではないと診断されました。
不育症治療を乗り越えての出産漫画ではありませんので、ご注意を。
作者自身の葛藤や悩みが描かれていますが、ドロドロしすぎず、全体にさらりとした読み口だと思います。
・流産体験が描かれた漫画が読みたい
・高齢での妊娠・出産にまつわる悩みや葛藤が描かれた漫画が読みたい
・不育症検査を受けようかどうか迷っている
・不育症検査で異常はなかったけれど不安を抱えている
…という方にはおススメしたい。
作者も描いていますが、流産を体験したことがある作者だから描けたと思えるエピソードが多いです。
逆におススメしないのは、なかなか妊娠できなくて悩んでいる人や不妊治療を考えている人でしょうか。
作中で3度の妊娠が描かれます。(言い方悪いですが)妊娠はしやすい体質の方かと思います。
現在「なかなか妊娠出来ない…」という悩みを抱えている人が読むと共感できないと思います。悩みの質が違うので。
また、不育症での治療は描かれていないので、治療の様子を知りたい方は楠桂さんの「不育症戦記」の方が良いかも知れません(2010年発売なので、ちょっと古いです)。
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『不育症戦記 生きた赤ちゃん抱けるまで』(楠桂)~第2子誕生までの壮絶な戦い~
最近、自分が第2子妊娠に向けて準備を進めていまして、「第2子の妊娠・出産が描かれた漫画一覧を作るか~」と調べておりました。 そういえば『不育症戦記』も第2子妊娠の話だったな。 そう思って手にとったら、 ...
作者のプロフィール
1970年、香川県生まれで現在43歳。
1993年に集英社「ぶ~け」でデビュー。
38歳で結婚。39歳で初めて妊娠するも、流産。その5か月後に2度目の妊娠と流産を経験。
2011年5月に40歳で出産。
家族は、夫・スガくん(フリーランスのデザイナー)と水玉さんの2人。
漫画の構成
1話12ページ、全12話の漫画と、コラム(各1ページ×6回分)が収録されています。
1~4話で最初の妊娠と流産、不育症検査。
5~7話で2度目の妊娠と流産、2度目の不育症検査。
8~12話で3度目の妊娠と大震災のゴタゴタ、出産が描かれます。
妊娠した!と喜び勇んで病院へいき、心拍を確認。
しかし、9週目で赤ちゃんの心拍が停止していることが分かります。
流産を経験した作者の悲しみ、苦しみが表現されており、経験していない私も一緒に泣いてしまいました。
医師に流産の手術を勧められるも、「次なんて考えられません」と一旦、病院を出たり。
自分に原因があったら…(二度とこんな思いはしたくない)と不育症の検査を受けたり。
…保健適応外だけあって、高いですね…。友達も2度目の流産の時に医師から説明を受けたそうですが「10万くらいかかるから止めた」と話していました。
神社にご祈祷をお願いし、お腹の赤ちゃんと過ごした日々や喜ぶ家族や友達を思い出して涙したり。
作者が泣いているだけでなく、自ら行動したエピソードを積み重ねていく感じなので、押しつけ感はないし、重すぎない。
他の人と比較して涙を流したり葛藤する場面もありますが、スポット的にさらりと描かれているので、しつこさはありません。
素直に「ああ…こういう気持ちになるんだな…。それは辛いだろうな…。」と思えます。
今度こそは…と、仕事をセーブして過ごした2度目の妊娠。けれど、流産。
自分の年齢を考え、出産できないのか…?と悩む作者の絶望感。
結婚した時は「子どもはいらない」と思っていたのに、今は子どもが欲しくてたまらない。
友人の妊娠・出産がうらめしく、喜べなくなる自分。
3度目の妊娠は9週目を突破するも、出生前診断を受けるかどうか?医師から問われます。
私は夫婦で話し合って出生前診断は受けないと決めています。
担当医師が勧めてきた経験もありませんが、作者が通う病院のように医師から検査について言われたら、ひるんでしまいそう…。
2度の流産を経験した作者にとって、出生前診断はある意味で究極の選択。
基本、作者に寄り添ってきた夫も、一緒に悩んでくれない。
出生前診断でリスクが分かっても堕胎はしたくない。
検査するなら羊水検査が信頼性が高いけれど、流産する確率は300分の1。羊水検査を受けるのは怖い…。
最終的に自分で決めるしかないけれど、こういう悩みもあるんだなあ…。
水玉さんは、出産直前に東日本大震災が発生し、急きょ里帰り出産に変更しています。
実家近くの2つの病院に電話し、受け入れ先を探したところ、あっさりOK。東京では7週目には埋まるのに…。
妊娠した身体で震災後の東京で過ごすのは不安だったろうなあ…。
余談ですが、地方の産婦人科は空いています。
私も島根県に里帰り出産する予定ですが、電話で確認したら「空いてますからいつでも受け入れますよ!」…という返答でした。
暗い気持ちのまま帰省した香川県。
娘を迎えたお母さんの表情がキラキラしていて、救われます。お母さん、ありがたいです。
12話あるのに出産場面は1話だけ。
出産もスムースといえばスムースです。自宅や車中で生まれなくてよかったね…というスピード出産。
陣痛でうんうん言わない出産場面も珍しいかもしれない。
まとめ
私に流産の経験がないこともあり、割とあっさりした感想となりましたが、バランスがとれた作品だと思いました。
作者の水玉さんは現在43歳で、第2子妊娠中らしいので、無事に生まれることをお祈りします。